イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「……社長に見えてたかな」

「だろうね。……だから許してもらえたんじゃない?」

「そんなオチって……!」

げんなりとうつむく私を見て、流星はくすくすと笑う。
笑い声が止まったかと思うと、今度は頬に手が伸びてきて、驚いて見上げた彼はいつになく柔らかい表情で微笑んでいた。

「お疲れ様。長い間、よく頑張ったね」

とびきり温かな微笑み。甘くとろけそうな瞳に、ふわふわのメレンゲのような言葉が私の全身を包み込んで、思わず呼吸を忘れそうになる。

気が付くと、目を伏せていた。
彼の顔が見られない。見つめていられない。
下を向いていても、そこに彼のあの柔らかな瞳があるということを考えるだけで、せわしなく鼓動が鳴り響いた。
頬に触れている彼の手のひらが、私の身体を緊張させる。

けれど、それは昔のような、不安感や恐怖心じゃない。

嬉しくて。
恥ずかしくて。
心の中を満たしているのは、とても温かな、幸せな感情。

「私だけじゃ、頑張れなかった」

目を閉じて、彼の存在を噛みしめながら口を開く。

「全部、流星のおかげだよ」
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