イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「これも確認お願いします」
市ヶ谷くんが次の書類を取り出して、流星へ渡す。
「指摘箇所を反映しました。それから、アドバイスに従って注釈を追加しました」

説明する市ヶ谷くんの指先を視線で追いかけながら、流星は「ふぅん……」と唸ってしばらく考えたあと、頷いた。

「……やればできるじゃないか」

市ヶ谷くんの瞳がキラキラと輝き出した。
「ありがとうございます!」
そう元気にお辞儀をすると、用事は全て済んだようだ、市ヶ谷くんがこちらに戻ってきた。

思わず私は彼を呼び止める。
「あの、市ヶ谷くん、ずっと気になってたんだけれど」

「あ、おはようございます、朱石先輩。どうかしましたか?」

いつも通りのはつらつとした表情で受け答えする市ヶ谷くん。特に以前と変わった様子はない。

「たいしたことじゃないんだけど。
流……氷川さんと、いつからあんなに仲良くなったの?」

「ああ、それは……」

はは、と照れくさそうに笑って市ヶ谷くんが頭を掻いた。

「俺、流星さんに気付かされたんです。
一か月前、落ち込んでいた朱石さんが、日に日に元気を取り戻していく姿を見て、ああ、好きな人には優しくするだけじゃなくて、叱ることも必要なんだって」

かつて流星が私に対して投げかけた厳しい言葉のことを言っているのだろう。
確かにあのあと私は、自分を取り戻し、もう一度目標に向かって立ち上がることができた。
あのとき、あえて甘やかさないでいてくれた流星には、今でも感謝している。
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