イジワル御曹司のギャップに参ってます!
これ以上私の方を見ることなく、彼はさっさとその場を立ち去っていった。
嵐が過ぎ去ったかのごとく。
私は呆然として、その場から動くことができないでいる。

『氷川』と『流星』――ひとりの人間の中に存在する、二つの顔。
別人だと思えだなんて、そんな器用なことできるわけないと思いながらも、彼らはあまりに違い過ぎていて、まるで本当にひとつの身体の中に二つの魂が宿っているのではないかとすら思えてきた。

プライベートの『流星』と仕事の『氷川』。全く異なる二人。
そもそもどうして分ける必要があったのだろうか。『流星』そのままの性格で働くわけにはいかなかったのか。
何が彼をそうさせたのだろうか。

そんなことを私が考えても仕方がないか……。

それでもいつか、二つの彼が生まれたわけを、聞いてみたいと思った。
< 69 / 227 >

この作品をシェア

pagetop