『ココロ彩る恋』を貴方と……
「…それで、満仲さんは今どこで仕事を?」


やめた後のことが気になって聞いた。


「さぁ…それはちょっと分かり兼ねますけど……」


本当は知っていても教えられないものがあるのだろう。女性は答えるのを渋り、目線を逸らしながら囁いた。


「ーーこの障子紙、紫音ちゃんが貼り替えたんですね」


腕を伸ばし、指でなぞりながら見つめる。母親くらいの年齢に見える女性は、カラフルな色の障子を眺めがら独り言を呟いた。


「…本当にお爺ちゃんっ子なんだから。こんな感じに貼ったら後が大変だって教えたのに…」


色取り取りの紙が貼られた障子は、日が差すと部屋中に綺麗な模様が写し出される。

彼女は時々この部屋の中でぼぅっと障子を眺めていた。何かを思い出しているような目つきで、掃除も疎かになっていた。


「満仲さんはお爺ちゃんっ子なんですか?」


女性に聞き返すと、振り向いた人がふわっと笑う。


「ええ、そうですよ。…と言っても、お爺ちゃんはだいぶ以前に亡くなられているんですけどね」


障子から手を離し、俺の方に向き直った。


「満仲が何か差し出がましいことを言ったのかもしれませんが、どうぞ許してやって下さい」


丁重に謝り、頭を下げる。


「えっ?あの…ちょっと待って下さい!」


こっちは何の事だか解らず、戸惑いながら言葉を制した。


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