『ココロ彩る恋』を貴方と……
カラッと廊下側の襖を開けてみたら、障子に向かい合っている人がいる。


(あっ……)


「こちらに居たんですね」


襖の外から声をかけると、兵藤さんは私を振り返った。


「満仲さんが言ってた障子がどんなだったか確かめてた。…確かに日焼けが酷い。こんな茶色っぽくなるまで張り替えずにいるなんて」


すぐに外された視線が障子戸の方へ向く。


「茶色っぽいんですか?」


黄色っぽく見えるのに。


「紙が焦げてると言えばいいのかな。日に焼けるって、つまりはそういう事だから」


「あっ…そうか」


黄色っぽく見えたのはそれでだ。


(さすが、芸術家は違うわ〜〜)


妙に感心しながら探していた目的を話そうと思った。


「あの、障子紙を買いに行くんですけど、お金は……」


そう言いながら手にしているお財布を見せようとした。


「あっ、それだけど」


思いついたように止められる。


「実は使って欲しい紙が多くあって」


こっちです…と立ち上がり、側を抜けて廊下を歩き出される。


「えっ…あの、ま……」


待ってとか、聞いてくれそうにない感じで歩き去る背中を見つめる。

紺地の作務衣を着た人は、母屋を出て離れへ向かっているようだ。

どうやら仕事部屋へ行くらしく、私は胸が弾みだすのを感じた。



(うわっ、初めて入る…)


どんな風になっているのか、ワクワクしながら後ろ姿を追いかけた。


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