すきなのに!!
「…あ、あたしってば何よくわかんないこと言ってんだろ。あはは」





前も思ったけど、あたしの知らない理陽がいるのはなんか変だし、ちょっと寂しい気もする。



って、そんなこと口に出しても意味ないし、理陽を困らせるだけなのに、なんであんなこと言ったんだあたしのバカ。




理陽に見えないように軽く自分の太ももを叩いて変な気を紛らそうとしてみる。




本当にどうしたあたし。



寂しいなんて思っちゃだめ。




こんな弱い女じゃなかったはずなのに。



頭ではわかってるのに心が追いつかない。





ごまかすようにへらりと笑えば、理陽は少し悲しそうな顔をする。


そして、視線を逸らして口を開いた、





「まあ、俺と栞がこの5年間、誰と何をして過ごして来たかなんてこの際どうでもいいんじゃない?」


「へ?」






思ってもみなかった返事に思わず素っ頓狂な声が出る。


ど、どうでもいいって…なんなのこの子。



理陽は小さく笑うと今度はあたしに向けて笑顔を作った。






「これからわかっていけばいいんじゃないの?それに栞は俺のことを知るよりも先に朋稀たちのことをもっと知っといたほうがいいと思うけどな」






理陽は特に何も特別なことは言ってないみたいな、普段とあまり変わらない口調で淡々と喋る。



まあ、確かにそうかも…。




理陽に言われるとなんだかそんな気がしてくるから不思議。



緩く弧を描いた口元で笑顔を浮かべる理陽はいつもより大人っぽい顔であたしを見つめる。



理陽の焦げ茶色の瞳にあからさまに顔を赤くして慌ててる自分が写ってあたしはさらに動揺した。



ちょ、見惚れてる場合じゃないのに…。



あたしは理陽の笑顔から逃げるようにして顔をすごい勢いで理陽から反対方向に動かした。




あぁ、またわかりやすく避けて、あたしは何をやってるんだ…。
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