For You 〜 天使だった君に 最高のお返しを
着替えるのが面倒くさく、そのまま炬燵に入った。

履いていたフレアスカートが炬燵の布団に引っかかって、太腿まで捲れあがってしまったけれど、直したところで誰もいないので諦めた。


壁にもたれかかる。

いちOLでそんなに大きな家に住めるはずも無く、炬燵のような大きなテーブルを置けば、必ず壁にもたれられる席が出来るのだ。

今、私が座っている席がその席だ。



そうだ。


背もたれのある席はこの席だけで、いつも私はこの席に座るので、座布団が分厚くしてあり、テレビが正面においてあった。

しかし、彼が初めてここに遊びに来た時、私が台所に飲み物を取りに行っている間に、この席に座ってしまったのだ。


もちろんそうだろう。

明らかに座り心地がいいのはここだ。

他の席には座布団すら置いていない。


私はいろんな理屈をこねて、必死で彼を席から追い出し、この席を取り戻した。


でも、彼に座布団を一つ分けてあげた。




いつもわがままを言って、駄々をこねるのは私の方で、譲るのは彼だった。


そんな優しい彼が大好きだった。

今でも大好きだ。


彼がこの世にいないなんて、信じない。
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