For You 〜 天使だった君に 最高のお返しを
『以上、長々としゃべり、しかも、この録音機を聴くルールを言ってきた訳ですが、聴きたくなかったら聴かなくていいんだよ。

あくまで、この録音は優梨花が立ち直るまでの手助けだから。


別に、俺が死んで二、三日で「元気出たー」って言うんなら、残りの録音が没になっても、全然いいです』


そんなこと絶対にしない。

これを全て聴ききることが、きっと私ができる最初で最後の、なおかつ最大の恩返しだから。


『それから……』


彼はそう言って、ひと呼吸した。

少し彼の周りの空気が引き締まるのを感じて、私も息を呑んだ。


『……もし、好きな人が新しく出来たら、俺のことなんか気にせずにさっさと忘れて、その人のことを全力で愛してください。

この録音機たちも捨てちゃって、全然いいからな』


好きな人――。


あなたと同じくらい、またはそれを超える人なんて現れるのだろうか。

今は考えられない。


でも、彼の行き届き過ぎている優しさと気遣いに、涙の量が増えた。



『俺は優梨花が笑っていてさえくれれば、それでいいです。

俺は優梨花にたくさんの笑顔の要素をもらってたのに、全然返せてなかったからな。
 
今日から、ちょっとずつ返していきます。


……って、なんかさっきからおんなじことばっかり言ってる気がする。

許してください!


話がすぐ長くなっちゃうんだよな、言いたいことがたくさんあってさ。

まあ、優梨花はよく知ってるか』


知ってるよ。

だからあなたが歌詞を書くのにすぐ悩むのも。



でも、伝えたいことを必死に言葉に紡ぐあなたはいつも素敵だった。
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