高橋くん攻略法






─────── 数日前。


 最悪だ。最悪だ。最悪だ。まさか一昨日買ったばかりの新作ゲーム、『虹色のスピカ4』を学校に忘れてきてしまうなんて。続きが気になりすぎて学校でやろうなんて考えるからこんなことになってしまったんだ。もう二度とそんなバカなことは考えないぞ。とりあえず、教室に誰もいないか確認だけしてこっそり持って帰ろう。

 入り口ドアの前からこっそり中を覗き込んでみる。けれど、僕が心配をするようなことが起きることもなく、教室には人が一人も見当たらなかった。
 よ、良かった……。地味に平和に暮らしてきたはずなのに、こんな些細なことでイジメになんて合うことになったら僕の人生は一瞬にして終わりだ。悪目立ちしないように、慎重に行動しよう。

 自分とは思えない俊敏な動作でロッカーからゲームソフトを取り出し鞄の中にしまい込んだその時だった。開け放たれた窓から勢いよく風が吹き、教壇に置きっぱなしになっていたプリント達が宙を舞ってそれぞれ生徒達の机や床にばらまかれてしまった。


「ああっ」


 慌ててプリント達を拾い上げていく。先週出されていた数学の課題プリントのようだった。
 一枚ずつ拾い上げ、最後の一枚を手にしたところで思わず手が止まった。同じクラスの、前原 弥生さんの机。小さくてふわふわで、このクラスではきっと男子の中で一番人気の女の子。ついでに、僕からは一番遠い存在。

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