高橋くん攻略法



 そもそも、この呼び名が浸透したきっかけは幸運の連続と皆の勘違いからだった。
 高校一年の秋、その頃仲良くしていたクラスの女の子の恋愛相談に興味本位でのってみたのがきっかけだった。
 その数日後に何とそれがうまくいってしまったらしく、その子には何度も何度もお礼を言われて私は調子に乗って他の女の子達の恋愛相談にも乗るようになった。それが全て幸運に恵まれ、あっという間に噂は尾ひれをつけて浸透していき、気がつけば私は数多の恋愛を乗り越えてきた恋愛マスターとして女の子達から頼りにされるようになっていた。

 ただ一つ、問題があるとすれば……。


「やっぱり梶さん、経験豊富なんだね。こんなに女の子の気持ちわかっちゃうなんてすごいよ」


 西山さんのキラキラとした瞳が私の心臓をぐさぐさと突き刺す。


「あっはは……まあねー」


 西山さんは私のひきつった笑みなんてまるで気にしていない様子で「さすが恋愛マスターだね」なんて言って笑っている。きっと私のことを……いや、私に関する噂を1ミリも疑ってなどいないんだろう。
 西山さんの真っ直ぐさに胸がキュンとする一方でチクチクと痛むのはきっと罪悪感からだろう。なぜなら私は、恋愛はおろか片想いすらまともにしたことのない恋愛マスターからは程遠い人物だから。

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