同じ星の下
出会い

1.

ふぅぅ、と鼻から息を出す。
これはちょっとしたため息だ。
スマホの画面をぼんやり見ながら思わずついてしまった。

かっこいいスーツを着て甘い言葉を囁いてくれる男性がそこにいた。
私に向かってにこやかに優しく笑いかけている。
なんてイケメンなんだ。
俺の側にいろ、なんて言われたら好きになるに決まっているじゃないか。

本当は大きくのたうち回りながら悶絶したいのだけれど、なにぶんここは職場の休憩室だ。
鼻からのため息でこらえた。

この頃スマホの女性向けアプリにはまっている。
恋愛系シュミレーションアプリ、というのだろうか。
何人かの男性キャラから一人を選び、恋に落ちるストーリーを読んでいく。
ストーリーを進めていくと時々起こるイベントの中で、彼の問いや行動に対する答えを3つほどの選択肢の中から選ぶ。
自分の選択した答えで恋愛の方向性も彼のセリフも変わっていく。
その彼の答えや態度にキュン、と少し、したりする。
いわば疑似恋愛だ。

最近はもっぱら仕事の休憩中に楽しんでいる。
悶絶したくなるのだから家でゆっくり楽しめばいいのだけれど、続きが気になってしまいついついアプリを開いてしまう。
ハッと時計を見ると休憩の終了時間が近づいていた。
よし、今日も楽しんだ、と思いスマホを置いて仕事へと戻る。
< 1 / 2 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop