ずっと、キミが好きでした。
れおは一度こうと決めたら決して考えを曲げない頑固な一面があるから、私なんかが説得出来るとは思えなかった。
「しず、帰ろう」
肩をポンと叩かれ、背後かられおが顔を覗かせた。
どうやら急いで掃除から戻って来たようで、髪の毛が少し乱れている。
額にも汗がうっすら滲んでいた。
2学期とはいえまだまだ夏の余韻は残っているから、少し動くと汗が出る。
「桐生君!なんで明倫の推薦蹴っちゃったの?」
「?」
「ちょ、やっちゃん!それは言わない約束!」
「だって、気になるじゃん」
「それでも、私が直接れおに聞くから」
「はいはい、わかりましたよーだ」
まったくもう。
やっちゃんってば、なんでもかんでも知りたがるんだから。
れおは首を傾げて不思議そうな顔をしている。
そして『もう一回言って』と、目で私に訴えかけて来た。
やっちゃんの言葉はどうやら、早口過ぎてれおには読み取れなかったようだ。
右耳の補聴器は今は外されていて、口の動きだけで相手の言葉を理解しなきゃいけないから必死なんだと思う。
れおの目線はほとんど相手の口元。
だけど、時々目を合わせて笑ってくれたりもする。
はにかんだような笑顔にドキッとさせられて、いつも胸の奥が熱くなるんだ。