甘い恋じゃなかった。
「ミルフィーユじゃファンの女の子たちにもっと愛想良いのに」
「あれはお客だからな。俺が変な態度取って評判が悪くなっても困るだろ」
「ふーん…」
じゃぁさっきのが桐原さんの真の姿なのか。
「あの若い女子たちもこんなオジサンのどこがいいんだか」
そう言いながらかき氷をつつく桐原さん。
「オジサンって…そういえば桐原さんて何歳なんですか?」
私よりも年上ってことは知ってるけど、正確な年齢は実は知らない。
「んー?今年28」
「まだ全然オジサンじゃないじゃないですか」
私と4個しか違わないし。
「もうオジサンだろ、立派な。
ていうかこれ、ブルーハワイ?って結局何味なんだよ、これ」
「さぁ?」
「さぁって」
「よく分かんないですけど、桐原さんぽいなって」
「はぁ?何だよそれ」
あんなに甘くて美味しいケーキを作るのに、性格は全然甘くなくて。
意味分からないファッションセンスしてるのに、女子にモテまくり。
「なんかよく分かんないじゃないですか、桐原さんって」
「お前…バカにしてんだろ」
よく分からない。
一緒に住んでるのに。
なんでパティシエをやめちゃったのか、とか。お姉ちゃんと何があったのか、とか。
今までの、恋愛とか。まだお姉ちゃんのこと…好きなのか、とか。