甘い恋じゃなかった。




「ミルフィーユじゃファンの女の子たちにもっと愛想良いのに」


「あれはお客だからな。俺が変な態度取って評判が悪くなっても困るだろ」


「ふーん…」



じゃぁさっきのが桐原さんの真の姿なのか。



「あの若い女子たちもこんなオジサンのどこがいいんだか」



そう言いながらかき氷をつつく桐原さん。



「オジサンって…そういえば桐原さんて何歳なんですか?」



私よりも年上ってことは知ってるけど、正確な年齢は実は知らない。



「んー?今年28」


「まだ全然オジサンじゃないじゃないですか」



私と4個しか違わないし。




「もうオジサンだろ、立派な。
ていうかこれ、ブルーハワイ?って結局何味なんだよ、これ」


「さぁ?」


「さぁって」


「よく分かんないですけど、桐原さんぽいなって」


「はぁ?何だよそれ」




あんなに甘くて美味しいケーキを作るのに、性格は全然甘くなくて。

意味分からないファッションセンスしてるのに、女子にモテまくり。



「なんかよく分かんないじゃないですか、桐原さんって」


「お前…バカにしてんだろ」



よく分からない。
一緒に住んでるのに。


なんでパティシエをやめちゃったのか、とか。お姉ちゃんと何があったのか、とか。


今までの、恋愛とか。まだお姉ちゃんのこと…好きなのか、とか。




< 141 / 381 >

この作品をシェア

pagetop