甘い恋じゃなかった。



「な、何で急に!今までそんなこと言ったことなかったのに…」


「言ったじゃん、はじめて話聞いたときに。まぁでもあんまり会わせたくなさそうだったし、全然イケメンじゃないって聞いてたからまぁいいやって思ってたけど。やっぱり会いたい」



天使の微笑みで「お願い」と手を合わせてくる莉央はめちゃめちゃ可愛い。例え目の前に平らげられた牛丼(大盛)があろうと文句なしに可愛い。だけど…



「えー…」



会わせたら桐原さんがカバ男なんかじゃなくて、超絶イケメンってことがバレてしまうし…って、そこはまぁいいんだけど。なんか莉央に会わせたら、すごい面倒くさいことになりそうな気がするんだよなぁ…。



渋っている私に、莉央は「じゃぁそろそろ戻るか」、とお盆を持って立ち上がった。



社食を出ようとしたところで、ちょうど牛奥とバッタリ出会う。




「お、おぉ。小鳥遊」



牛奥がちょっと気まずそうに私を見る。牛奥と会うのはあの花火大会ぶりだけど、私何かしたっけ?



「私もいますけど」



私の隣で、莉央が牛奥の肩を小突いた。



「あぁワリ。早乙女…今日も力つえーよ」



今ので肩を痛めたらしい牛奥。莉央はその可憐な見た目とは裏腹にバカ力である。



「すごかったな、花火。クライマックスとか」



肩を擦りながら、牛奥が私に向かって少しぎこちなく微笑みかけた。そんなに肩、痛いのだろうか。



「あぁ、うん、そうだね!すごかった~」


「つーか屋台のたこ焼き食べたか?パリパリでめっちゃうまかっ…」


「え!?牛奥も花火大会行ったの?」



牛奥の言葉を遮って莉央が勢いこんでそう尋ねた。



「あ?行ったけど。小鳥遊とは偶然会って…」


「じゃぁもしかして、明里が一緒にいた人も見た?」


「あー…桐原さんのこと?びっくりしたよ、まさか桐原さんといるなんて…」


「え、もしかして牛奥も知り合い!?」


「あー…まぁな?知り合いっていうか…」


「ふーん?」」




キラリと莉央の瞳が怪しげな光を放つ。やばいぞ。私は直感的にそう思った。



そしてその直感はすぐに確信へと変わる。



莉央が牛奥に向かってニッコリ微笑み、言った。



「今度私と明里と、その桐原さん?と焼肉するんだけど牛奥もどう?」


「ちょっ…!莉央!?」



まだ会うのもオッケーしてないのに!?ていうかいつの間に焼肉設定!?




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