甘い恋じゃなかった。



だけど一週間ぶりに来たミルフィーユは、なんだか異様な空気に包まれていて。


店の外まで、ズラーッとお客さんが並んでいる。それも女性ばかり!!


いくら桐原さんが働くようになって来店数が激増したとはいえ、店の外までこんなに長い行列が出来ているなんて見たことがない。


一体何が起きているんだ…。



「最後尾はコチラですっ!コチラですよ~!!」



すると、行列の一番後ろで手に看板を持ち声を張り上げている店長を発見した。嫌な予感がしつつも近づいてみる。

看板には、“キララ王子とハグキャンペーン実施中!”とデカデカとした字で書かれていた。は、ハグキャンペーン…??


「店長…何やってるんですか…?」

「あれっ、明里ちゃん!どう?明里ちゃんも並んでく?」


軽~いノリで親指で列を示す店長。


「いや、なんなんですか?これ。ハグキャンペーンって」

「そのままだよ!
ケーキ一個お買い上げのお客さまにつき、キララくんと30秒のフリートークタイム!二個以上お買い上げのお客様には、さらにハグ一回プレゼント!」


列の隙間から店の中を覗いてみる。桐原さんが貼りつけたような営業スマイルで、お客さんに対応している姿が見えた。


「…よく桐原さんがオッケーしましたね?」

「まぁね!やってくれないと店閉める!って言ったら快く引き受けてくれたよ」


店長…それは脅迫というものだ。



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