溶ける部屋
爆発する
全員が部屋に入り終えて、あたしたちは広間へと移動して来ていた。


それぞれの前には紙とペン。


これからあの部屋で感じたこと、思い出したことを書き出していくのだ。


「一応言っておくけれど、嘘はつくなよ」


弘明が言う。


あの部屋に入る事で、自分にとって後ろめたい感情まで出てきてしまっている。


それも含めてちゃんと書けと言う事だ。


あたしは郁美へと視線を向けた。


郁美は部屋に入ってからも特に変わった様子を見せていない。


体がだるそうではあるけれど、それ以外にはなにもない。


でも、あたしにはわかっていた。


郁美はきっとあたしに対しての怒りを膨らませている。


郁美がペンを持っている手が少しだけ震えているのがわかった。


下唇を噛みしめて何かを我慢しているようにも見える。


あたしは郁美を気にしないように自分の紙に視線を落とした。


まずは思い出したことを書いていく。


小学校低学年くらいの頃の記憶。


友達と遊んでいる時の自分を思い出した。


とても楽しくて、この時間がずっとずっと続いていけばいい。


そう思える記憶だった。
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