溶ける部屋
幼女の絵
伶香の作るご飯に比べれば少し残念な味のするお味噌汁を食べて、あたしたちは広間に座っていた。


「で、今日はどうするの?」


昨日話を聞いていなかった郁美がそう聞く。


「もう1度、あの部屋に入ろうと思う。今度は1人5分。出てきた時にすぐに部屋の中で感じたことや思い出したことを紙に書きだして行こう」


弘明が説明する。


郁美は一瞬暗い表情を浮かべたけれど、誰も反論はしなかった。


あの部屋に入らなければ次に進めないと言う事を、もう誰もが理解していた。


「せめて、トシが何かヒントを残してくれてればよかったのにね」


伶香がため息交じりにそう言った。


忘れていたわけではないけれど、トシの事を考えている暇もなかったあたしはその言葉でハッとさせられた。


「そういえば、トシの部屋を調べてないよね?」


トシがあの部屋で言い残した事がすべてだと思っていたけれど、もしかしたらそうではないかもしれない。


何度かあの部屋を出入りして、徐々に溶けて行ったのだとすれば、部屋にヒントを残している可能性もある。


「そう言われれば……」


郁美が目を丸くしてあたしを見た。


「よし、じゃぁ先にトシの部屋を調べてみよう」


健がそう言い、立ち上がったのだった。
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