溶ける部屋
でも、いつまでも緊張していても仕方がない。


この建物で救助を待つのなら長期間の生活を考えておかなきゃいけない。


そう思い、あたしは名前の横に花を描いた。


「あ、それかわいー!」


郁美があたしの紙を覗き込んでそう言った。


「そ、そう?」


「わ、ほんとだ可愛い!」


そう言って来た伶香の紙にはよくわからない生物が描かれている。


タコのようにもイカのようにも見えるそれはなんだろう?


「ん? あたしの絵を見て感動してるの?」


ジッと見ているあたしを見て伶香がそう言って来た。


「う、うん。その絵、なに?」


「これ、馬に決まってんじゃん!」


そう言い、伶香はあたしの肩を叩いた。


「う、馬?」


「そう、馬。全力で走っている馬」


伶香は自信満々に言う。
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