溶ける部屋
囲う
郁美の怒鳴り声を聞いてから、あたしたちは3人ともほとんど会話をせずに歩いていた。


この前と違うのはちゃんと飲み物と食べ物を持ってきた事。


しかし3人の間に立ち込めている空気は重たくて、昼時になってもあまり食べる事ができなかった。


郁美は一体何を怒っているんだろう?


あたしにも言えないような事なんだろうか。


そう思うと、なんだか寂しい気持ちになってしまった。


こんな状況で誰にも言えない物を抱えているのだとしたら、郁美がいつ爆発するかと不安になった。


「そろそろ行くか」


休憩を挟んで、健が再び立ち上がった。


上へと延びている小道は徐々に細くなっていっているようで、どこまで続いているのかもわからない。


このまま進めば小道はなくなり、森になってしまうんじゃないかと思えた。


それでもあたしは腰を上げて、健の後ろを付いて歩き始めた。


郁美は相変わらず無言のまま、一番後ろから歩いてくる。


郁美の足音をよく聞いておかなければ、ちゃんとついて来ているのかどうかわからなくなるくらいだった。


でも、今はなにも聞かずにそっとしておいてあげた方がいい。


そう思い、あたしは気持ちだけを郁美に向けて足を進めたのだった。
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