溶ける部屋
☆☆☆

しばらく広間にいると、いつの間にか眠ってしまっていた。


ハッと気が付いて周囲を見回せば、郁美と伶香も座ったまま寝息を立てていた。


さすがに、昨日一睡もできなかったから眠気に襲われたみたいだ。


「起きたか明日花」


健にそう言われてあたしは少しだけ頬が熱くなった。


健に寝顔を見られてしまったと思うと、恥ずかしい。


「ごめん、寝ちゃった」


「いや、俺も気が付いたら寝てたから」


そう言い、優しくほほ笑む。


その笑顔に心がジワリと温かくなるのを感じた。


同時に、この笑顔を無くしたくないと思ってしまう。


絶対に、ここから出たい。


できれば全員で。


「みんなが起きたら、鍵のかかった部屋に暗証番号を入力してみるつもりだ」


そう言ったのは弘明だった。


弘明は冷蔵庫から牛乳を取り出してその場で飲んでいる。


「暗証番号がわかったの!?」


「いや、そうじゃない。ただ、なにもせずに待っているだけよりも、何か行動に起こした方がいいと思って、健と2人で決めた」


「そうなんだ……」
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