溶ける部屋
「あ、おはよう明日花」


キッチンに立っている伶香がそう声をかけて来た。


「伶香、いつもご飯任せちゃってごめんね。すぐ手伝うから」


「大丈夫だよ、今日は弘明も手伝ってくれてるから」


そう言われてみると、弘明がお味噌汁を作っている所だった。


その様子があまりにも不似合いで思わず笑ってしまった。


「なんだよ、笑うなよ」


弘明が少し頬を赤くして照れながら、怒っている。


「今日はね、いつもより頑張って作ったからね!」


そう言い、伶香はフライパンの上のお肉をお皿へと移動させ、その上に半熟の卵焼きを乗せた。


「朝から肉!?」


しかも分厚いステーキ肉だ。


「そうだよ。今日が終わる時には何かが変わる。そう信じて、戦う前のエネルギー補給だよ」


伶香がそう言い、ほほ笑んだ。


今だけは怖い事を忘れたい。


そんな様子だ。


正直朝からガッツリステーキなんて食べる気にはなれなかったけれど、伶香の気持ちは嬉しかった。


「よし、じゃぁ、あたしはライスを準備するね!」


そう言い、賑やかに支度を始めたのだった。
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