龍の押し売り
大人になって……
 ――それから幾年が過ぎて、天耀は立派な龍の青年になり
 
 鈴玉は見目麗しい乙女になった頃、二人は夫婦になりました。

 
 長くてピンと張りのある髭をたなびかせ、素晴らしい龍の身体をくねらせて天耀は空を飛びます。
 
 彼の首元には美しく髪を結い上げた鈴玉を乗せて。
 
 今日は天帝に、結婚のご挨拶に行くのです。

「覚えてる? 天耀。私達が初めて会った時のことを」

「覚えているとも、鈴玉。君は俺のことを『鰻』だと勘違いしたね」

「もう! そのことは悪かったと何度も謝ったじゃないの!」
 
 鈴玉は紅梅のような唇を尖らし、ふん! と拗ねてしまいました。

 
 ごめんごめん、と天耀は謝りますが、いつも口だけです。
 
 天耀はいつもすましている自分のお嫁さんが、こうして拗ねる姿が可愛くて仕方がないのです。




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