天国の不動産



雨は降らなかった。




天国というものは常に過ごしやすい気候にあった。



それでも退屈だと感じないのは本当に不思議だった。




時間の感覚は無いのに、なぜ悲しいや苦しいなどの感情は残っているのだろう。




何故神様は生まれ変わりや、死後の世界など、死人に選択肢を与えたのだろう。




僕は何度目か分からない、深いため息をついた。




生きていた時にこんなに考えたことはあっただろうか。



高校受験も大学受験もなんとなく決めた。




まだ10年そこそこしか生きていない僕に大きな自己選択の機会はそうそうなかった。




やっぱり何も見ずに生まれ変わってしまおうか。




生まれ変わってしまえば、後悔も忘れて新しい人生を歩めるのだから、変に動いて後悔を増やすよりも、何も見ず、何も知らず、勝手に生まれ変わった方が楽なんじゃないか。





やけくそになっているのか、いないのかも分からない。



気が変わらない内に不動産へと向かった。




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