memory〜紅い蝶と私の記憶〜
「せーな?家ついたよ?」


「あははっ、ごめんね?少し考えごとしてて」


「大丈夫。悩みとかあるならいつでも相談してね?」


悩み…か。


あるって言ったらあるけど…。


頭が痛くなるなんて相談しても…ね?


病院に行け!って話だし。


「うん。その時はよろしくね!」


バイバイ。


そう言って門をくぐろうとして、まだ今日のお礼を言っていないことを思い出した。


危ない危ない。


いろいろと教えてもらったり、ケーキも奢ってもらってるのにお礼を言い忘れるところだった!


「昶、今日はありがとう!すっごく楽しかった!」


本当に楽しかった。


お兄ちゃんが守ってる街はいろいろなお店があって、みんなが心から笑っていた。


記憶を失った私を受け入れてくれた優しいみんなの街だから。


私も好きになることができた。


ありがとう。


そんな意味を込めて微笑む。


ぴたっと、昶の動きが止まった。










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