memory〜紅い蝶と私の記憶〜
あ…そうだ。


視線を感じるたびに振り返ると、それは絶対に築路からの視線で。


それら全部、愛おしそうに見ていた。


それを思い出した瞬間、顔がボッと赤くなる。


「答えは見つかったか?」


「…うん。見つかったよ」


見つかったけど…。


昶になんて言おう。


告白されてすぐに返事するどころか、保留にして普通に出かけたりもしちゃったし。


昶にドキドキしてたのも本当のこと。


でもそのドキドキは一体?


「昶のことを気にしてるんだろ」


「…うん」


「記憶を失って不安定だったんだ。そこに優しく接されたら誰でもそうなる」


誰でも…。


「星南。恋愛は一対一でやるんだ。誰か一人のことを気にしていたら前に進めねぇ。築路と昶だって、それをわかってる。あいつらの思いを無駄にすんな」


そうだよね。


気にしてる暇はない。


前に進まないと。


そのために昶を傷つけることになってしまったとしても…。










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