僕らの空は群青色
ともかく、その日も渡は僕の部屋にやってきていた。
バイトが終わり、22時過ぎだったと思う。いつも通り貸す本を用意して、腹が減っているだろうと焼うどんを作って出してやる僕は、本当にいい友人だと自画自賛できそうなものだった。

「なにこれ」

「焼うどん」

「くそまずそう」

確かに具材はもやしとかまぼこだけだし、ちょっと醤油のタイミングが早くてうどんの一部が焦げていた。しかしくそまずそうと言われるほどではないんじゃないか?
渡は万事その調子で、いつだって文句のひとつふたつは出てくる。僕もこの頃には結構慣れてきていたので、応戦する。

「文句があるなら、あげませんよ」

「文句じゃないし、食べるし」

「いただきますが聞こえませんよ?」

僕の言うことを無視して、渡は箸を取った。

渡が食べ終わるまで、僕は炭酸飲料を片手にバラエティ番組を見ていた。
いつも通りどちらもあまり喋らない。蒸し暑い夜で、僕は窓を開けた。柔らかで気持ちの良い夜風が勢いよく吹き込んでくる。
当時僕の部屋にある気の利いたものは一組のテーブルで、パイン材のそれはなかなか丈夫で温かみのある色をしていた。
僕らは大抵そこに向かい合ってつき、テーブルの両側にいて、互いに好きなことをしていた。
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