僕らの空は群青色
行きつけの図書館は、前ほど頻繁ではないにしても利用していた。僕がテスト勉強やレポートを始めると、たいてい渡は向かいで本を読んでいた。
文庫やら雑誌やら図鑑やらを眺め、飽きると僕にちょっかいを出してくる。レポート用紙の隅に落書きをしたり、テキストをめくって「こんなのわかるのか?」と馬鹿にする。

「わからなくてもやるんだよ」

僕がそう答えると、「学生は不憫だなァ」と嘲笑が返ってきた。
そんなに言うなら見せてやろう。
ある時、僕はふと思い立って言った。

「明日、僕と大学の講義に出ようよ」

「え、やだよ」

即答された。僕はめげずに言い募る。

「学生の不憫さを思い知らせてやる。90分座ってるだけで、結構だるいから。試してみろ」

「いやだって。そもそも大学ってそんなに簡単に紛れ込めるもんなのかよ」

「うん、割と」

今はどうか知らないけれど、当時の大学は結構ゆるかった。出席カードを出すだけの講義がほとんどで、聴講生が紛れていても誰も気にしないし、気付かない。

「それにさ、渡が将来大学に行きたいって思ったとき、どんなところか見ておくのはいいんじゃない?」

渡が一転、表情を変えた。もともと陰気な表情をさらに暗い笑みに歪める。

「行かねえ、大学なんて」

「お金の問題なら、奨学金もあるし」

「そういう問題じゃなくて。行ってどうするんだって話」
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