僕らの空は群青色
陳腐な言葉だったし、とてもこんな言葉で伝わるとは思えなかった。
渡は一瞬心底悲しい顔をして、震える唇を再度開いた。

「おまえと会って楽しかった。たぶん人生で一番楽しかった。たくさんくだらない話をしたし、たくさん笑った。人殺しの俺がこんなに楽しく過ごしていいのかと思ったよ。そうすると、本当に悲しくなるんだ。それで深空に済まなく思うんだ。あいつはもう笑うこともできないのに、なんで俺は笑ってるんだろうって罪悪感で死にそうになるんだ。……でも……でも俺は……」

渡はそこで言葉を切った。
薄い色の瞳から涙がこぼれ、それからゆっくり視線が僕に移動した。

一瞬の静謐。

たぶん、この瞬間、僕らは本当の友情を見たのだと思う。

困ったように笑い、渡は言った。


「おまえといれば、この人生が消化試合じゃなくなるかも……そんなことも思っちまうんだ」


僕は溢れそうになる涙を必死に飲み込んだ。
これ以上彼を傷つけないために、泣いてはいけないと思って歯を食い縛った。

ただ遠坂渡にようやく触れた気がした。

「馬鹿野郎」

僕は涙の代わりに言った。

「早いよ、おまえ。人生とか……消化試合とか……、僕たちまだろくに生きてないよ」

渡はというと、それ以上は何を言おうとしても唇がぶるぶる震えるばかりで、言葉にならない様子だった。
涙がはらはらと零れ落ちる。

「早いよ、馬鹿」

僕はもう一度呟いた。
他にたくさんの言葉が胸のうちにあったけれど、どれとして渡に響きそうになく思ったから言わなかった。
渡が右手で額を押さえ、嗚咽した。





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