キミ専属
 裕紀先輩に「そこ、連れてってください」と言ったのはいいものの、裕紀先輩が私を連れてきたのは細くて薄暗い路地裏だった。
路地裏をずんずん進んでいく裕紀先輩。
奥に進むにつれて私はどんどん不安になっていく。
『あ…危ない所に連れていかれるんじゃ…』
そんな考えが脳裏に浮かび、私はぶんぶんと首を振る。
『裕紀先輩に限ってそんなことはないはず…!!』
1人で葛藤していると、「着いたよ」という裕紀先輩の声が聞こえた。
裕紀先輩は斜め手前にある建物を指さしている。
私が恐る恐る裕紀先輩の指さす先を見ると、そこには薄暗い路地裏には相応しくない、明るいイエローの外壁と手書きの看板が可愛い、お洒落なカフェがあった。
「可愛いっ!!」
私は思わず声を上げる。
そんな私を見た裕紀先輩は嬉しそうに微笑むと、こう言った。
「店の名前見てみ」
「…?はい」
『なんでお店の名前?』と思いつつも私は裕紀先輩に言われた通り、手書きの看板に書かれたお店の名前を見る。
「…ハチミツカフェっ!?」
お店の名前を見た私のテンションは一気に急上昇。なぜならハチミツは私の大好物だから。
裕紀先輩はニコッと笑ってこう言った。
「梅ちゃん、中学の時ハチミツが好きって言ってたからさ」
私は裕紀先輩がそんな事を覚えてくれていることに驚いた。
中学以来ずっと会っていなかった私達にとってそんな事は忘れていても当然なのに…。
でも、『私は裕紀先輩に忘れられていなかったんだなぁ』と思うと、単純に嬉しい。
「はいっ!大好物です!!」
私は満面の笑みでそう言った。
そんな私を見て笑みをこぼす裕紀先輩。
今私が笑えているのは裕紀先輩のおかげ。
『裕紀先輩に会えてよかった』
私は心からそう思った。
間もなくして裕紀先輩がこう言った。
「立ち話もなんだし中に入ろう」
それを聞いた私は「そうですねっ」と頷き、私達は2人で店内に足を踏み入れた。

 そのカフェは店内もすごくお洒落だった。
イエローと木の色合いで統一された店内は明るい雰囲気が漂っていて、居るだけで元気になれそうだ。店内に流れている洋楽も爽やかで心地良い。
 私達は向かい合わせの2人席に座ると、2人でメニューを見始めた。
ハチミツがたっぷりかかったパンケーキか、それともハチミツのムースか、どっちにしよう…。
「うーーん…」と唸りながら悩む私。
そんな私を見てクスクスと笑う裕紀先輩。
「笑わないでくださいよー」
私は冗談交じりに裕紀先輩を睨む。
すると、裕紀先輩は「ごめんごめん」と軽く謝ったあと、こう言った。
「どれとどれで悩んでる?」
「えっと…このパンケーキと、このムースです」
メニューを指さしながら言う私。
そんな私に裕紀先輩はある提案をした。
「じゃあ、俺がパンケーキ注文するから梅ちゃんはムース注文して。それで半分こしよう」
「ええっ!でも、裕紀先輩はそれでいいんですか?」
私は思わず聞き返す。
すると、裕紀先輩は不思議そうに「なんで?全然いいよ」と答えた。
『裕紀先輩だって他に食べたいものがあったかもしれないのに…』
そう思うと申し訳ないけど、私はありがたくお言葉に甘えることにした。
 それから私はアイスカフェラテとムースを注文し、裕紀先輩はアイスコーヒーとパンケーキを注文した。
料理が来るのが待ち遠しくてたまらなかった。
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