LOVE物語
ーside尊ー

遥香が下の名前で呼んでくれたことが嬉しくてしばらく放心状態になっている。

それから、面談で俺みたいになりたいって言ってくれた。

そんな嬉しい言葉を、遥香からもらったんだから俺も頑張ろう。

きっと、遥香は俺に気を使って1番安い大学を選ぶだろう。

そんな理由で選んだらダメだ。

施設見学は大切だし、じっくり悩んで考えて決めないと入ってから遥香が苦労する。

「遥香ー。ちょっといいか?」

「はーい。」

俺は遥香の部屋に入る。
さすがだな。もう、勉強を始めていたのか。

「遥香に1つ言っておくな。行きたい大学がまだ決まってないなら、学費の値段が1番安いところにしようとか思うなよ?決めるのは遥香の本当に行きたいところでいいんだから。」

「でも私、できるだけ安いところの方が尊の負担も少ないし…。」

「遥香。俺はな、少しでも遥香が勉強しやすい学校で学んで欲しい。行く大学によっては教え方も違うし、環境も違ってくる。それなら、6年間通うんだから妥協したらだめだよ。」

「…私が、1番学費が安い大学に行こうって思ってるのは尊の負担を減らすことと…実は分からないの。大学をどう選べばいいのか。それなら学費の1番安いところにしようって。」

「それならさ、俺の通っていた大学行くか?今の遥香の偏差値なら難しくないよ。あの高校で成績上位に入ってるなら行けなくないと思うよ。あの大学には俺も山城先生もいたんだ。だから、遥香のやりたいこともそこでなら叶えられると思うよ。」

「ほんと?」

「あぁ。あそこならそれほど学費も高くないしそれに、教授も見る限り変わってないっぽかったしな。だから、今週の土曜にオープンキャンパスあるから参加してみない?」

「うん!」

遥香の目がこんなにもキラキラしているのは初めて見た。
よほど嬉しいんだな。

「頑張るのはいいけど、あまり無理するなよ?」

「うん!」

遥香の頭を撫でると部屋から出た。

医者か…。

遥香と働けるの楽しみだな。

そう思いながら夕飯の支度を始めた。

気づけば7時を回ってて遥香が部屋から出てくる気配がなく、再び遥香の部屋に入った。

「遥香、夕飯できたから食べよう。」

「うん…もうちょっとで終わる。」

俺は、遥香の広げている教科書とノートを見る。

「遥香、すごい難しい数学やってるんだな。」

「難しい?」

「難しくないのか?」

「これは、難しくないよ。」

「遥香、頭いいんだな。」

遥香の教科書の理解度や、ノートのまとめ方が分かりやすくて尊敬する。

「そんなことない。」

そうは言ってるけど謙虚なところも遥香らしい。

「遥香はもっと自分に自信を持ちな。」

「…持てたらいいけど…。」

俯いた遥香の頭を撫で、肩を支えながらリビングへ向かった。

「「いただきます。」」

箸を進め始めるが、遥香は少しだけ食べると箸を置いた。

「もういいのか?」

「うん。残してごめんね。」

遥香は人より半分の量しか食べられない。
大人の量が食べられない。

それが、原因で遥香の入院が長引いたりするから心配だ。

「いいよ。ちゃんと食べられたね。」

俺は、半分食べられた遥香を褒めることを忘れない。

「遥香、お風呂あがったら診察するね。」

「うん。」

元気がない遥香の様子が気になっておでこに手を当てた。

温かいな…。

「遥香、だるくないか?」

「…少し…だるいかも…。」

「ちょっと熱測ろう。」

俺は遥香に体温を測らせ、毛布とか水枕を急いで用意した。

それからしばらくすると体温計がなる。

「遥香、見せて。」

「はい。」

渡された体温計を見ると37.9。
これは上がるな。

無理しすぎたんだな。

遥香を姫抱きにし自分のベッドへ運ぶ。

「遥香?聴診させて。」

「うん。」

「ちょっとごめんな。」

遥香の服を浮かし聴診を始めた。

音が悪いな…。

そんなことを考えているうちに遥香は咳き込み始めた。

「ゲホゲホッゲホゲホゲホゲホッ…ハァハァ」

「遥香!大丈夫か!?深呼吸しよう。」

俺は、急いで吸入器を遥香の口に当てた。

背中をさすりながら発作が収まるのを待つ。

発作は30分続いたがようやく落ち着いた。

って言っても、まだ喘鳴が聞こえるけど。

「疲れただろうから、もう眠りな。」

「尊…そばにいて。」

「遥香…」

遥香がこんなふうに俺を頼ってくれるのは初めてで嬉しかった。

「俺はここにいるよ。」

遥香の頭を撫でながら眠るまでそばにいた。

遥香も安心したかのように眠りについた。
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