ぬくもり
相談
帰りの電車の中、優はすぐに眠ってしまった。



「司、ありがとう。
仕事まで休んで連れて来てくれて…。」


私は素直にお礼を言った。


「最後くらい美沙の為に何かしたかったから…

優との思い出も作れたし、本当に良かったよ。」



司は、優に目線を落としながら、寂しそうな笑顔で言った。

司の笑顔と『最後』という言葉に、胸がズキッとした。



…そうだ、司が部屋を見つけたら私達は終わるんだ。



司の腕の中で幸せに眠る優。


この何日間で、すっかり父親になった司。



あなた達を引き離してしまっていいの?


私は、本当にそれでいいの?



私の中で離婚に迷いが生まれる。




司は家には戻らず、そのまま会社に出社した。


私と優は、駅から家までの道をのんびり歩いて帰った。



今日のご飯は、司へのお礼をこめて精一杯美味しいものを作ろう。


一度家に帰り、荷物を置いてから買い物に出掛ける。




張り切って買いこみすぎちゃったかなぁ…



優をベビーカーに乗せてきて良かったと思いながら、家までの道を、重たい買い物袋を下げ歩いて行く。



まだ時間はたっぷりあるけど、私は早々と晩御飯の支度にとりかかる。


出来上がった量は…とても食べきれない。



あっ!そうだ!

凌君と翔君に持って行ってあげよう!



私は出来上がった料理を、大きなタッパーに取り分けエレベーターで下へと降りて行く。

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