田舎に行こう
次の日の日曜日は、少し曇っていたが
奈津の心は晴れていた。

自分の父親に会える日が来るなんて
今までは思いもしなかった。
だって死んだんだと勝手に
思い込んでいた。
幼いころは父親がいないことで
辛い思いをしたこともあった。
でも、寂しいと感じたことは
なかった。
それは母親がいたから。
母親は父親の変わりもしてくれていた。

今さらお父さんなんて呼ぶことは
できそうにないが、
母親の愛する人だとそういう風に
捕らえようと思っていた。

その人はお昼頃にやってきた。

家では変な緊張感が漂う中
待っていると、我が家の敷地内に
車が入ってくる音がした。
その車がだれのものかは
すぐに分かった。
父親だ。

奈津はドキドキしていた。
緊張しすぎて、息苦しかった。
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