向日葵の天秤が傾く時
「母が……、母が大学在学中に病気で入院しまして。早くに父を亡くして、女で一つで育ててくれた母に余計な心配をかけたくは無かったんです。」



数字が苦手な母に代わり、家計をやりくりしているうちに簿記を覚え進む道を決めた。


高校を出たら働くと言ったのだが、学ぶことが好きだった巫莵の勉強の機会を奪いたくない、頑張るから大学に行って欲しいと母に言われ、奨学金を受けて入学した。



頑張りすぎた結果とはいえない病名だったが、勉強も楽しくそんな巫莵の話を聞くのが楽しそうな母を見ているのが嬉しかった。



「そんな母が懲戒解雇を受ける数日前に亡くなりまして。」



奨学金返済、入院費と治療費の支払いが給与の殆どを占め、貯金もままならなかった。



「それから夢を……、都合のいい夢を良く見るようになったんです。」



真っ黒な空に浮かぶ真っ白な満月



その光に照らされた貴女


景色ははっきりしているのにその姿はぼやけてる



話しかけたって答えない


困った様に
悲しそうに
寂しそうに


それでも幸せそうに声も無く笑うだけ



これが夢だと認識したのは


貴女がこの世にもう居ないと気付いたから
< 12 / 33 >

この作品をシェア

pagetop