向日葵の天秤が傾く時
「ここで一つ、私から提案があるのですが……。次が決まっていないのであればうちで働きませんか?」


「……え?」



「いやね、秘書はいるんですがなにぶん少人数なのに案件が多くて事務所に付きっきりなんですよ。私も外に出る時に秘書が欲しいなと、だんだん思うようになりましてね。それに、衢肖さんは経理も出来る。うちにピッタリだと思うんですよ。」



「いや、でも……」


「うちは私にとって気が置けない人物ばかりを採用しています。ただ、男が怖いと思うのなら、私を好きだと言って構いません。初頭効果……?メラビアンの法則……?まぁ何にせよ、私を盾にしてもらってかわせばいい。情けは人のためならず、と言いますでしょ。私の為、事務所の為だと思って、この話引き受けてくれませんかね?」



優しさや気遣いは感じられたが、同情や哀れみの類いは感じられなかった。



「大変有難い話ですが、さっき知り合った私に何故そこまで……。歪んでるかもしれませんが、嘘だとは思わないのですか?何で信じてくれるんですか?」


「それは疑う理由が無いからですよ。」



悪魔の証明にすらならない


長年の経験で培った賜物がこの鑑識眼だから。
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