ボルタージュ王国の恋物語〜番外編〜

何も話さず食堂を後にしたアレンは、誰とも目を合わせず騎士の宿舎に戻り、いきよいよくドアを開け中に入る。

ドアに背を預け、掌で顔を覆う。

アレンの白磁の肌は、薄っすらと紅く色づき、表情のない冷たさの顔面は、この上なく甘ったるい顔だった。

「…ぅぅあああ!!!……エルティーナ様、
…可愛い……可愛い………………
はぁ………可愛かった……なんだあの可愛いさは??…反則だな……………
…あの絵姿、
……欲しいな、、、」

ここに誰かいたら気でも触れたか?? と思うアレンの態度。

(「…興味ない振りは流石にあれが、限界だな……あぁぁぁ、私もエルティーナ様の絵姿、たっぷり眺めたい。
三年前にお会いした時より、大きくなられたな。少し大人っぽくなり過ぎだが……。あの時、すでにかなり胸も大きかったのに……見た目と中身がアンバランスなのは、心配だな……。
王女だから、しっかり貞操は守られているから大丈夫だと思うが………。
…あんな絵姿を、あんな場所で見せたら……確実に、夜のオカズにされるだろう…怒…レオンの奴……怒…。
……レオンがエルティーナ様の絵姿を皆に見せたのは、やはり護衛騎士の選別だな。
エルティーナ様の溺愛ぶりを見るからに、絶対に王女に手を出さないと確信を持てる男を選ぶ筈……。
レオンのあの態度から推測して、最有力候補は私だろう。
エルティーナ様のようなタイプは好きじゃないと、懇々と話して、態度で示している。
………きっと、また会える……もう一度、エルティーナ様に会える……
早く…………会いたい……名を呼んでもらいたい……それ以上は…
……決して求めないから………」)


アレンはそのままの姿で、ベッドに倒れこむ。その瞬間、心臓が縮み呼吸が止まる。
咳き込んだ後、口の中に鉄錆の血の味が広がる。こうして咳き込む度、エルティーナを思い出す。

優しく抱きしめる腕の温かさを、
滑らかで柔らかな肌を、
……三年前にお互いの肌を合わせた甘い感覚を思い出す。

熱を持つ身体を心地よく感じながら、アレンは瞳を閉じる。


夢でもいいから、会いたかった。
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