おめでとうの定義
あたしも気分よく前に進むためには、余計なことを考えたくないのに、彼の残した捨て台詞は捨てにくい置き土産のようで、あたしを困らせる。


彼の残した歯ブラシを捨てて、思い出を1つ消す。


彼の残したスリッパを捨てて、思い出をもう1つ消す。


そんな作業を繰り返せば、すぐにすっきりすると思ったのに、置き土産はあたしを悩ませる。


野良猫のように、人目につかないところで彼が願いを叶えていたら。
つまりは、自らの命を絶っていたら。



そんな想像は、愛情の有無ではなくて、単にあたしの感情としての嫌悪感と後味の悪さで身震いしてしまうほど、きつい。
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