強引上司にさらわれました
中はシングルベッドがひとつだけ置かれた六畳ほどの部屋だった。
ベージュのカーテンが、リビングとは違ったリラックスムードを醸し出している。
「本当にいいんですか?」
「いいと言ったはずだぞ。何度も言わせるな」
「でも、課長、彼女いないんですか? 管理人さんがさっき言っていた“妹”って、彼女のことじゃないんですか?」
課長は、ほんの一瞬だけ目を泳がせた。
怪しさ満点だ。
やっぱり妹なんかじゃない。
だとしたら、いくら上司と部下以上の関係がないとはいえ、私はここに住むわけにはいかない。
「彼女はいない。管理人さんは、誰か別の住人と勘違いでもしてるんだろ」
「……そうなんですか?」
「しつこいぞ」
ギロリと睨まれてしまえば、私は黙るほかない。
その視線から逃れるようにして荷物を部屋の片隅に置くと、課長に改めて頭を下げる。
「ほんの少しの間、お世話になります」
そう言って顔を上げると、「素直でよろしい」と珍しく優しい笑みを浮かべた課長がいた。