不器用な二人はあまのじゃくの関係
トラブル発生です。遥太side

「いない」

翌朝、教科書を借りようと杏奈の教室をのぞくが優梨はいるのに杏奈がいない。

「優梨、杏奈は?」

俺は1組にずかずか入っていく。

「まだ来ないんだよね〜。遅刻じゃない?」

「あー、なるほど。あるかもな。」

「なんで?あ、昨日どうだったのよ〜?ラブラブしてきた?」

優梨は最初の眠そうに俺の方を見ていた顔と打って変わってニヤーっとしている。

「は!?そんなんじゃねぇーよ。ってなんで知ってんだよ。」

「いやぁ、何でかなぁ〜?」


どうしても優梨のニヤニヤがおさまらないようで両手で口元をおおって目だけ見えるかたちで俺を挑発してくる。朝からムカつくやつめ。

「てかさ、アイツだれ?」

俺がひとりの男を指さす。

「えー、話そらすかここで?
んまぁ、そっちの話も…ふふふ」

「なんだよ」

ブツブツと独り言をニヤニヤした顔でしている優梨は正直不気味だ。

「杏奈の前の席の人だよ。」

「んなこた知ってるわ。」

「ふぅーん。じゃあいいじゃん。」

たぶん俺が言いたいことに気づいてる。意地悪いモードの優梨は俺がしっかり聞かないと教えないようだ。

「この前、廊下でふたりで話してんの見たんだよ。結構近かったし…」

「気になるんだったら自分で聞けばー?」

「お、おう」

クソ…憎たらしい表情で足を組み直す優梨。自分で聞けないからお前に聞いてんだろ!気づいてるとは思うけどさ。




「なにそんなうじうじうじ虫してんのよ!
『好きって知られたら今までみたいにできなくなるかも〜』なんて思ってんの?ばっかじゃないの。」

「なっ!」

「あんたが杏奈のこと好きなことくらいわかってんのよ。バレてないとでも思ってた?」

「マジかよ……それって杏奈にも…?」

バレてたら恥ずかしすぎるぞこれは。
慌て出す俺を見て優梨は深いため息をはく。

「んなわけないでしょ!あの鈍感ネガティブ娘が気づいてるとでも思ってるわけ?あんたがちゃんと言わないと気づくわけないでしょーが。」

ズバズバ言う優梨は的確だがずいぶんと表現がひどい…(笑)

「そ、そうだよな。」

「告んの?」

「は?!バッカ!アイツは俺のことそんな風に見てねぇよ。」

「はぁ。W鈍感・ネガティブで嫌になるわ。」

ボソッと結構なひどい言葉は俺には聞こえなかった。

「杏奈来ねぇな。」

「完全に遅刻ね、こりゃ。」

「そうだな。じゃあ、俺は戻るわ。」

「はいよ〜」

もう優梨はなにも言わない。
ちゃんと告白しないとダメだよな。
そんなことを考えながら教室に戻ろうとしたとき、俺のクラスが知り合いの声が聞こえる。

「ねぇ、昨日遥太くんが隣のクラスのアンナ(?)って人と一緒に駅らへん歩いてるの見ちゃったんだけど!」

見られてたのか。別にいいけど…

「はぁ!?誰それ!」

ひとりの女子が声を荒らげた。
この声は…櫻井!?

「あ、夢花!遥太くん来た!声ちっちゃくして。」
廊下にいる俺に気づいたひとりの女子が言った。すると櫻井は立ち上がり俺の方に歩いてくる。
俺はなにも聞いていなかったように普通に教室に入る。

「おはよう!遥太♪」

さっきとは全然違う子猫のようなかわいらしい声で話しかけてくる櫻井。きゅるっと潤ませた瞳で俺を見る。女への恐怖心…(笑)

「はよ。」

俺はそれだけ言うと自分の席にドサッと座り、これ以上話しかけられないように机につっぷした。




櫻井ってこんな性格だったのか。
杏奈は裏表がなくて素直で感情がすぐ顔に出てわかりやすくてかわいくて……
そういうところも好きなところだ。



嫌な予感がする…




そんなことを思いながらぼーっとしたまま午前中が過ぎた。




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