真愛
「それに、ここは私たちを家族として受け入れてくれたの。でもなーつんに会いたいし、あのお店には出入りしてたの!」
親と仲悪いって嘘までついて。
そういって舌を出す。
「雪乃があのお店にいてくれてよかった。じゃなきゃ仲良くなれなかったし」
「お前親は?」
突然問いかけてくる尊。
私はさらりと答える。
「捨てられたの、私。元々愛されてなかったしね」
小さい頃からそうだった。
だから逃げるようにあのお店に居場所を求めた。
「なら、俺と一緒に住め」
「え!?」
「お前の欲しいものでも、何でも買うし不自由はさせねぇ。俺もお前と居れて一石二鳥」
「どうせならそうしちゃえば?私、賛成!」
……ものは試し、だよね。
お金も使わずにご飯が食べれるし。
不満はないし、尊のこと知りたいし。
「強制的に住まわせるけどな。お前が繁華街を出入りしてるってバレたし、アイツらも嗅ぎ回るだろうしな。あの店がバレるのも時間の問題だ」
「それは一理ある。じゃあ…お言葉に甘えて」
「決まりだな」
ニヤリと笑って携帯を取り出し、どこかに連絡する。
「おい、まだ来ねぇのか。あぁ?…2分だけ待ってやるよ」
そういって電話をすぐに切った。
しばらく待つと、楽が息を切らして座敷に入ってきた。
「ひ、人使いが荒すぎるにも…ほ、ほ、程って…もん、が…」
息を切らせてゼェゼェしながら途切れ途切れに話す。
さっきの電話楽だったんだ。
「家に帰るぞ、送れ。今日から奈々はうちに住む」
「わーお、お探しの蝶が見つかって浮かれてるんだねぇ〜?ふーん、ふーーん?」
ニヤついていると、楽の脇腹に尊の華麗な蹴りがはいった。
悶える楽を無視して、私を抱き上げ座敷を出る。