真愛



楽side

「あー、人使い荒い」

舌打ちをしながらも散らかった物を片付ける。

ほんとこき使われてない?

いくらなんでも酷いねぇ〜。

とかいいながら片付けるんだけどね?

一通り片付いた頃に寝室から尊が出てきた。

「奈々ちゃんは?」

「寝てる。お前今で帰った方がいい」

「は?何で?」

「とりあえず今日は」

そういいかけた時だった。

寝室から大きな叫び声が聞こえたのは。

「またか…!」

焦って寝室へ急ぐ尊を追う。

寝室では、いつもとはまるで別人の奈々ちゃんの姿。

ベッドの上で暴れまわり、壁に頭を打ち付けている。

「いやあっ……!!!やめ、てっ……!!!!」

その状況にただ立ち尽くすしかない俺。

目の前にいるのは、本当に奈々ちゃんなのかと疑うぐらい。

「奈々、しっかりしろ、俺だ」

「やだっやだやだやだっ……!!!殴らないで、おねが、しま、す……!!!許して……!!」

抱き締めようとする尊を拒絶する。

何かに怯えてるように見える。

「いやぁぁああぁあぁぁあ……!!!」

「奈々っ……!!」

無理やり抱き締め、子供をあやすように背中をトントン、と叩く。

「大丈夫だ、大丈夫。聖藍はここにいない」

抱き締められて尚、暴れていた奈々ちゃん。

しばらくすると静かな寝息をたて、大人しくなった。

「どういう、こと」

「…毎日こんな感じだ。昨日もそうだった」

「うなされてるの?」

そんな次元じゃねぇよ。

悲しそうに自嘲気味に笑う。

聖藍からの傷は、奈々ちゃんの心に深く刻み込まれている。

トラウマとして、心の中で生き続けているんだろう。





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