真愛



「社長からお話は常々聞いております!私も繁華街で1度お目にかけた事がございますが、その時の美しさといえば!そこらの女も目に入らない私でも魅入ってしまうほどの美しさ…。まさに繁華街に飛び交う美しき蝶……。繁華街を悠々と歩くその姿を見た日から貴女に会いたいと何度願ったことか…!!」

ま、ま、マニアだ……。

1人だけ違う世界に入ってしまった。

な、何だろう…面白い人…。

「ちなみに、これでも久月組の幹部だ」

「え、そうなんだ」

「はい!!あらゆる情報を扱っております!!そこら辺のくだらない噂話から組の極秘情報まで何でもござれでございます!!」

よし。決めた。

この人の認識は変人でいこう。

「頭おかしいけど仕事は出来るやつだよ〜」

「お前も頭おかしいからな」

「え!?」

うん、負けてないよ楽。

とりあえず気に入られてる?みたいでよかった。

「っと、お話もさておき。社長?とてつもなく仕事が溜まっておりますので今日中に片付けてくださいね」

清々しいほどの笑顔でいう。

あぁ、鬼なんだな。

即座にそう思った。

「ちっ…仕方ねぇな…。奈々」

社長イスに座り、自分の膝に座るように合図してくる。

「仕事が終わるまで、私に一切触れないで」

「はぁ!?無理だ、そんなの」

「無理じゃない」

「…………奈々」

お願い、とでもいうように子犬のような目で見つめてくる。

そんな目をしても通用しないからね。

「仕事を終わらせればいい話でしょ?さっさとやって」

そういうと、ものすごい早さで次々と仕事を片付けていく尊。

火がついた感じ?

「尊がこんなに仕事を早く片付けてるの初めて見た」

「私もです…!奈々さん、ありがとうございます……!!」

泣きながら頭を下げてくる。

いやいや、どんだけ仕事怠けてたの。

蒼聖さん泣くほど苦労させてるじゃん。

…案外いい作戦だった感じかな?







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