真愛
「み、こと……」
愛しき人の名前を口にしても、返事が返ってくることはない。
ねぇ…どこにいるの……?
ソファにうずくまっていたからか、外が真っ暗なのに気づいていなかった。
時計を見ると、12時前。
ご飯も食べる気がしなくて、ただただボーッとする。
尊にメールしても電話しても、返ってくることはなくて。
こんな事は初めてで、また涙が溢れる。
もう、飽きられてしまったのか?
考えれば考えるほど不安になる。
すると、家のドアが開く音がした。
電気がついて、現れた人は……。
「…起きてたのか」
私の愛しい人だった。
「ご飯は?食べたか?」
その問いにも答えず、俯く。
尊はため息をついて、浴室へと足を進めた。
「どこに行ってたの?」
無意識に出た言葉だった。
聞くつもりなんて、なかったのに。
「…いったろ、仕事だって」
「嘘よね?だって楽、ここに来てたわよ。仕事が終わったから、って」
「ちっ…アイツ……」
私は震える声で聞いた。
「浮気、してたんでしょ…」
「は……?」
言い出したら止まらない。
私の、悪い癖。
「メールも、電話もちゃんと返してたよね。でも今日は一切連絡ないし、朝から私と目も合わせてくれなかったよね。それって、隠したいことがあるからでしょ?」
「それはだな…」
「言い訳なんか聞きたくない!!…本当は心の中で嘲笑ってたんでしょ?私だけ舞い上がって…バカみたい…。もう、終わりね。今までありがと」
そういって、出て行こうと玄関へ向かうと、尊が私の腕を掴んだ。
「…離して」
尊は無言で私の手を引き、外へ出る。
エレベーターに乗っても、手は掴まれたまま。
どれだけ振り払っても絶対に離れなかった。