スパイシーショコラ
「山田サーン!山田サーン!どこいったのかなァ~?あれぇ~?」



官能のひとときから、花江を現実に引き戻す、係長の間の抜けた声が響いた。



「あ、ハーイ!!今行きまーす!!」


大急ぎで袋をロッカーにしまうと、駆け足でオフィスに戻った。



少し残った仕事をやり終えると、午後6時半。



仲のいい友達の夕子に、食事に誘われていたけれど、それを断って、しなくてもいい残業をしていたのには、密かな「わけ」があった。


自宅のある駅で電車を下りると、時刻は夜の7時。



もうすぐ、彼に会える。


そう、思うと、自然と足早になった。



人気のない夜の公園。



どこからともなく聞こえる、軽妙なアコーディオンの音色・・・・




「あ、いる、今日もいるわ・・・」花江はつぶやいた。



遊び相手を失った遊具たちが、悲しげに佇む、夜の公園。




はたして、その片隅に、彼は、いた。




そしてその傍らには、年季の入った屋台が一つ・・・・




彼こそが、あのチョコレートを作ったショコラティエ、アキラだった。




・・・・・・つづく。


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