シロツメクサ




「俺は、向井晴一
 みんな、ハルとか呼ぶ。
 まだ誕生日来てねぇから16だけど、
 いちお高2だから」



ムカイハルイチ…


…なんか



「語呂悪くない?」


「うっせぇな、お前、
 傘貸してやんねぇぞ!?」



別に頼んでないし。

そう言い返す前に、
コイツ……晴一が口を開く。



「んで、お前の名前は?」


ちょっとだけ、
怒りからか照れからか顔を赤くして、
晴一は言った。



「あたしは、中村優奈。
 15歳で、中3」


なんの嘘偽りもなく、いった。



初対面の人。


2つ年上の人。


しかも男。



危険な要素(?)いっぱいでも、
あたしはなぜか、
“危ないかも”なんて、
全く思わなかった。




それは、晴一があまりに
間抜けっぽいせいか、
それとも……--








イヤ。
この可能性はないな。




そう思って、
あたしはその感情の欠片を、
胸の奥深くへと、しまった。



きっと一晩過ごしたら、
すぐに忘れる相手だろうし。



少しでもそんな風に思うのは変だろう。





「…ん、ユウ、でいっか?」


「どーぞ御自由に~♪」



言って、あたしは晴一の手から
傘をもぎ取り、先に歩きだす。



「あっ、てめェ!!」


「えへへへ~♪」


「ってか、お前道わかんのか!?」


「わかんなーい。
 どっちー??」



…ったく。


そう小さく呟き頭をかいて、
晴一が駆け寄ってくる。



そんな姿を見て、
あたしはふいに気付いた。






「さっきまで悲しかったの、
 一体どこ行ったんだろ」



声にださずに呟いて、
雨の中、ゆっくりゆっくりと回る、
大観覧車を見上げる。





そして、






「--ばいばい…」






誰にともなく、呟いた。




< 10 / 27 >

この作品をシェア

pagetop