オオカミ専務との秘めごと

日曜の朝。

今私は、小さな段ボール箱を前にして正座をしている。

無地で、朝一番配達のシールが貼られているこれは、つい先ほど、愛想のいい宅配便のお兄さんが届けてくれたもの。

送り主は『大神孝太郎』。

なにかの間違いでは?と一瞬思ったが、きっちり書かれた住所は確かにここで、宛名は私の名前。

いったいなにが入っているんだろうか。

契約時には、物を送るとは一言も言っていなかったけれど・・・。


じーっと見つめていても中身が見えるわけではない。

意を決し、恐る恐る開けてみると、クッション材の中に白い箱が埋もれていた。

取り出してみて商品画像が目に入り、思わず「え?」と声が漏れた。


「わあ・・・可愛い」


箱の中に入っていたのは、ピンクゴールドがツヤツヤピカピカの新品スマホだ。

しかも防水性のある最新機種らしく、これは塚原新聞店の学生バイトの子が「これ絶対いいですよ!防水っすよ、防水。神崎さん、雨の配達に携帯しても大丈夫なんですよ!」と目を輝かせていたものだ。


「どうして、これを私に・・・?」


箱の中をよく調べてみるとオオガミホテルのメモ用紙が一枚入っており、大きく『仕事専用。常に携帯すること』と書かれていた。


「まさか、レンタル契約のために、これをわざわざ?」


連絡を取り合うだけなら私のスマホで事足りるのに、どうしてなんだろう?

不思議に思いつつ、とりあえず電源を入れてみるとメールが一件入っていた。


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