幸せの青い鳥
こんなにも、ボクが哀しかったのは初めてだ。


人間界に生まれてから今まで

ボクの小さなココロはいろんなことで揺れたけど

自分以外の誰かのためにこんなに悩むなんて。


昨日のるりちゃんの、

涙でぐしょぐしょの顔を見てから

ずっとボクは考えていた。


あの時の涙はどういう意味のものだったのか


大好きなるりちゃんのために、何をしてあげられるのか。
考えたら眠れなかった。

でも今朝、お日様が昇る頃になって

ボクは大きな決心をした。



目覚時計が鳴ると、るりちゃんは起きてきてバルコニーの窓を開けるんだ。

そしていつもの時間になると学校に行く。

今日も、いつものようにボクと比呂をカゴのままバルコニーに出して、


「ママ、お天気がいいから多呂と比呂を日光浴させるね」


と言って家を出た。


ボクたちが日光浴をするのは二階のるりちゃんの部屋のバルコニーで


お日様が高く強く昇ってくると、るりちゃんのママがボクたちを部屋に入れてくれるんだ。


お天気がいい日だけのスペシャルメニューで、比呂もすごく喜んでいる。


でもね、今日はボクにとって最後の日光浴になるかもしれないんだ――。



力一杯、くちばしで持ち上げた。


カゴの真ん中の戸――重い鉄の扉を、下から、首とくちばしに力を入れて頑張ったら、死にそうなくらい体が変になった。


ボクの体のギリギリひとつ分までその扉を一気に持ち上げた。


瞬間、ボクはバルコニーから青く澄んだ空へ飛び立った。




広くて大きな空に、感激。同時に、温室育ちのボクは初めての外の世界が少し不安だった。


とりあえず…下に降りてみよう。



大きな樫の木が、ボクを待っているように両手を広げていた。


枝に止まると、サワサワと風が迎えてくれた。



そんな安らぎもつかの間、黒い恐怖が目の前を通り過ぎた。


カラスだ…!ボクはびっくりしてそこから逃げたのだった。
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