隣の部屋と格差社会。


温もりの正体。

それは、背中にぽんと置かれた佐渡さんの大きくて温かい手。


佐渡さんは、私の一歩後ろに立っていた。きっと、武田さんと私が話している間ずっと。


なぜか、それだけで。

佐渡さんの存在を感じただけで、失ったはずの体温が戻ってくる。



「取り敢えず、場所を移しませんか?」



頭上から聞こえる佐渡さんの声は、いつもよりすこし低い。


それに反して、背中に置いてある手の温度は高い。

少し熱いその手は、私の身体を支えてくれている。


「いえ、これで失礼させて頂きます。」


武田さんは、ふぅと息を吐き乱れてもいないネクタイを整えた。


「詳細はメールしておきます。」


そう言って踵を返した武田さんの背中を、佐渡さんに支えられながらただただ見つめることしかできなかった。



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