隣の部屋と格差社会。


思い出したらなんだか、また恥ずかしくなってきて顔が熱くなってきた。


急ごしらえした冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、バルコニーへと出る。


3月も、もうすぐ終わる。あと2日もしたら4月だ。


すっかり暗くなってしまった外の景色を眺めていると、まだまだ冷たい夜風が頬を撫でる。


思った以上に寒いな。部屋に戻ろう。


そう決めたとき、ふと隣から煙草の匂いを感じた。


「へ?」


隔たりのない隣のバルコニーに居たのは、すごく見覚えのある人。


びっくりし過ぎ力を失った手の中からミネラルウォーターが転げ落ちる。


足元を濡らすミネラルウォーターのせいで、また体温が下がっていく。


そこに居たのは、今日対応してくださった少し意地悪な区役所の職員さん。



『佐渡さん』だった。


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