隣の部屋と格差社会。



「今日はママがお仕事だから、竜ちゃんの家でお留守番なの。」


竜ちゃん…。

一瞬、誰のことかと思った。

でも、そうか。佐渡さんの下の名前は確か『竜一』だ。


「菖蒲先生のおうちここなんだね。」

「そう、なの。」


そうなんだー、と嬉しそうにうちのバルコニーを覗き込む恵美ちゃんは一体佐渡さんとどんな関係があるのか。


その疑問にようやくたどり着いたとき、


「恵美ー、朝ごはん出来たぞ。」


隣の部屋の中から、佐渡さんの声が聞こえた。

本当に今更だけど、佐渡さんが『恵美』と呼んだことに、頭を殴られたような衝撃が走る。


「菖蒲先生も一緒に食べようよ!」

「先生はもう食べたから。ありがとう。」


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