隣の部屋と格差社会。



マンションにようやくたどり着き、自分の部屋へと入ると、当然真っ暗で誰も居ない。


いや、一人暮らしなんだから誰か居たら怖いけど。


『おかえり』が聞こえないのは、やっぱり寂しい。


今までは、家に帰って誰も居ないということは一度もなかった。

母やお手伝いさん、秘書の武田さんなど。まあ、お父さんには『おかえり』なんて言われたことないけど。


お風呂入らないとな。あ、お腹もすいたな。

でも、何もしたくない。


取り敢えず、外の空気でも吸おうかな。


そう思ってバルコニーに出ると、今日も隣に人の気配が。



「おう、今帰りか?」


佐渡さんだ。

そうだった。このバルコニーは、左隣との仕切りはないんだ。


朝のスーツ姿とは全然違う、黒のTシャツにグレーのパーカーとスウェット姿。

そして右手には、ビール。


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